研究・産学官連携の研究TOPICS 【研究者インタビュー】医学部内科学講座(腎臓内科部門) 深水 圭 教授
本学の研究活動は多くの研究者により支えられています。このシリーズでは、研究に情熱を注ぐ先生方の素顔に迫り、その研究内容や教育への想いを紹介していきます。
腎臓内科部門の歩みとポリシーについて教えてください
私たちの内科学講座(腎臓内科部門)は、2000年に当時の第三内科から独立する形で発足しました。初代主任教授の奥田誠也先生が築き上げられた礎を引き継ぎ、私がバトンを受けてから今年で11年目を迎えます。
講座のテーマとして掲げているのは、「Generalistとして腎臓内科学を極めたい ― 純粋な探究心を忘れずに ―」ということです。腎臓は「全身の鏡」とも言われるように、他臓器や全身の状態と密接に関わっています。そのため、特定の専門分野に閉じこもるのではなく、幅広い視野で患者さんを診察・診断できる医師の育成を目指しています。
教室員には常に「情熱と感謝」を忘れないよう伝えており、私自身も教室員を守り、一丸となって患者さんに寄り添うチームでありたいと考えています。
医師を志したきっかけと、現在の専門を選ばれた理由を教えてください
祖父も父も久留米大学医学部の出身で、医師として働く姿を見て育ちましたので、私にとって医師を目指すのはごく自然な流れでした。
特に父の影響は大きく、患者さんに優しく接し、深く信頼されている姿は幼心に強く刻まれていました。実は、研修医時代は父と同じ循環器内科医になる決意を固めていました。父が所属していた第三内科に入局し、専門医も取得して研鑽を積んでいたんです。
転機となったのは、私が医学部5年生の時の父の闘病でした。父は皮膚がんを患い、当時は有効な治療法が少ない中、副作用に耐えながら最期まで壁にもたれて患者さんの診療を続けていました。その姿を見て、父の背中を追いたいという決意を固めました。卒業後は父と同じ第三内科(当時)に入局し、循環器専門医を取得しましたが、2000年の腎臓内科の発足を機に、新たな挑戦としてこの道を選びました。
仕事でのやりがい、大切にしていることは何ですか
一番のやりがいは、やはり患者さんの状態が改善し、感謝の言葉をいただけることです。それに加えて、現在は主任教授として、若い教室員たちが生き生きと働く姿を見ることに大きな喜びを感じています。
大切にしているのはコミュニケーションです。教授室に閉じこもるのではなく、常に医局員と対話し、現場の空気感を共有することを意識しています。
先生が取り組んでいる研究について教えてください
現在は「糖尿病性腎臓病(DKD)の進展阻止」や「希少疾患の病態解明」など、多岐にわたる研究を行っています。
特に注力しているのが、2025年度の科研費にも採択された「制御性B細胞(Breg)」を用いた新しい治療法の研究です。これは、炎症を抑える働きを持つ特定の細胞(Breg)を体外で培養して投与することで、急性腎障害から慢性腎臓病への進行を防ごうとする試みです。
また、面白い試みとして、迷走神経の刺激などを組み合わせてこの細胞をより活性化させる研究も進めています。これらは世界でも類を見ない戦略で、成功すれば腎臓だけでなく、全身の様々な臓器障害に対する新しい治療の柱になる可能性を秘めています。
教育において工夫されていることはありますか
教育は診療と同じくらい重要です。特に学生教育では「臨場感」を大切にしています。例えば、回診の際にはトランシーバーを活用しています。私が患者さんの前でお話ししている内容を、少し離れた場所にいる学生たちもリアルタイムで聴講し、その場でディスカッションできるようにしています。
また、Webを活用して他大学と英語で症例報告を競い合うなど、若い世代が「世界」を意識できる環境づくりにも力を入れています。
海外留学のご経験について教えてください
2004年から2年間、オーストラリアのメルボルンにあるBaker IDI Heart Research Instituteへ留学しました。当時は糖尿病性腎症の研究に没頭する毎日でしたが、現地のスタッフに温かく支えられ、非常に充実した時間を過ごせました。
家族も一緒に渡豪したのですが、当時幼かった息子は、この時の経験が今の英語力の基礎になっているようです。私にとっても、研究者としての視点を広げてくれただけでなく、家族との絆も深まった、いつかまた暮らしてみたいと思える大切な場所です。
休日の過ごし方やリフレッシュ方法はありますか
走ったり泳いだりして体を動かすのが好きですね。また、キャンプや釣りに出かけることもあります。自然の中で過ごす時間は、日々の診療や研究から頭を切り替えるための大切なひとときです。
若い研究者や医師を目指す方へメッセージをお願いします
「研究をすると臨床がおろそかになるのでは?」と心配する人がいるかもしれませんが、それは違います。むしろ逆です。研究を通して培われる「物事の本質を見極める力」や「科学的な思考」は、目の前の患者さんをより深く理解するための強力な武器になります。
若いうちに一度は研究にどっぷりと浸かり、できれば留学などにも挑戦して世界へ羽ばたいてください。
略歴
1993年 久留米大学 内科学(三)講座 入局
2002年 同 内科学講座腎臓内科部門 助手
2004年 Baker IDI Heart Research Institute (Australia, Melbourne)に留学
2006年 久留米大学 内科学講座腎臓内科部門 助手
2007年 同 講師
2009年 同 准教授
2015年 同 主任教授 兼腎臓センター長
所属学会(役職)
日本内科学会(評議員)、日本腎臓学会 (評議員・理事)、日本腎臓リハビリテーション学会 (代議員・理事)、日本高血圧学会 (評議員)、日本アフェレシス学会 (評議員)、福岡県透析医会(理事)、心脈管作動物質学会(評議員)