研究・産学官連携の研究TOPICS 新聞を読む習慣が高齢者の脳と心を元気に―西日本新聞社との論文が国際学術誌に掲載―
本学は、株式会社西日本新聞社との共同研究成果の発表に伴い、11月6日に旭町キャンパスにて合同記者会見を行いました。
本研究では、久留米市在住の高齢者を対象としたランダム化比較試験(RCT)※を実施し、「日常的に新聞を読む習慣」は、認知機能(MoCA-J)、うつ症状(GDS-15-J)、生活空間・活動範囲(LSA)のいずれにおいても良好な影響を与えることを科学的に解明いたしました。本成果は、認知症分野の国際学術誌『Frontiers in Aging』(2026年9月4日付)に掲載されました。
※ランダム化比較試験(RCT): 対象者を「くじ引き」のように公平に2グループに分け、偶然や偏りを排除して効果を厳密に確かめる、最も信頼性の高い検証手法のこと。
記者会見の様子
会見には、内村直尚学長、高次脳疾患研究所の小路純央教授、佐藤守講師をはじめ、西日本新聞社の田川大介代表取締役社長らが出席しました。
冒頭、内村学長は「2018年の連携協定締結以来、本学の医学的知見と西日本新聞社の持つ地域とのつながりを活かし、健康づくりに取り組んできました。今回の成果は、日々の暮らしの中で無理なく続けられる健康づくりの選択肢を示すものであり、地域の皆様の健康寿命延伸と豊かな暮らしに貢献したい」と挨拶しました。
続いて、研究を担当した小路教授と佐藤講師から、研究の背景や具体的な成果について説明を行いました。
研究の背景と特徴
超高齢化が進む日本において、認知症予防や進行遅延のための非薬物的な生活習慣の確立は重要な課題です。読書などの知的活動の有用性は示唆されていたものの、「新聞閲読」という単独の習慣がもたらす効果を、エビデンスレベルの高い「ランダム化比較試験(RCT)」で検証した研究はこれまで多くありませんでした。
本研究は、薬剤を用いず、日常生活の中で手軽に取り組める「新聞を読む」という習慣の効果を、信頼性の高いRCT手法を用いて検証した点が大きな特徴です。
研究方法と結果
久留米市内在住の60歳以上の軽度認知障害(MCI:認知症予備軍)の方々63名を対象に、無作為に「新聞を読むグループ(31名)」と「読まないグループ(32名)」の2群に振り分け、6か月間の介入調査を実施しました。
新聞を読むグループには西日本新聞朝刊を週4日以上読んでもらい、「気になった記事を読む」「1面コラムを音読する」「脳トレ問題に取り組む」といった課題を行っていただきました。
【主な研究成果(6か月後の変化)】
6か月後の検証において、新聞を読むグループは読まないグループと比較して、以下の項目で良好な結果が確認されました。
・認知機能(MoCA-J)の維持・向上
新聞閲読群では64.5%の人にスコアの向上が見られ、認知機能の維持・改善効果が示されました。
・うつ症状(GDS-15-J)の軽減
新聞閲読群の54.8%でうつ症状の改善傾向が認められ、心理面でのプラスの効果が確認されました。
・生活空間・活動範囲(LSA)の拡大
新聞閲読群の58.1%で活動範囲の拡大・向上が見られ、よりアクティブな生活へつながることが示されました。
今後の展望
本学は今後も、高次脳疾患研究所や「もの忘れ外来」などを通じ、学術研究と臨床の両輪で認知症研究を進めてまいります。地域に根ざす大学として、得られた知見を地域の健康増進や認知症予防施策へ還元し、皆さまの健やかな暮らしに貢献できるよう努めてまいります。
論文情報
論文タイトル(和訳):地域在住高齢者における新聞閲読の認知・行動面での効果:実行可能性を検討したランダム化比較試験
論文タイトル(原題):Cognitive and behavioral benefits of newspaper reading in community-dwelling older adults: a feasibility randomized controlled trial
掲載誌:Front. Aging 7:1929793. doi: 10.3389/fragi.2026.1929793
受理日:2026年8月12日 掲載日:2026年9月4日
著者:Mamoru Sato, Sawako Negoto, Shinya Nakano, Chihoko Urata, Tetsuya Ioji, Hideya Kodama, Emi Yoshimura, Yukinori Tasaki, Shinichiro Goroku, Kiichiro Morita, Yoshihisa Shoji(責任著者)