地域貢献のTOPICS 【経済学部文化経済学科】法学特殊講義「八女における伝統・文化・景観による『地域の価値』づくり」をテーマに発表
7月24日、「法学特殊講義(地域連携と絣フェスタ25)」〔担当:前田俊文教授(地域連携センター長)〕が開催されました。この講義は、法学部と経済学部の学生が履修することができ、地域と連携した実践的な学びの場として展開されています。本講義では、経済学部文化経済学科の岩本洋一ゼミの研究発表も毎年行われており、今年はゼミ3年生が、「八女における伝統・文化・景観による地域の価値づくり」をテーマとした調査研究の成果を発表しました。
本年度、岩本ゼミでは、同テーマの下で、八女福島地区を対象に、伝統工芸、古民家、歴史的町並みなど、「地域らしさ」の源泉を掘り起こし、差異や意味(物語)を与え、商品化していく工程や、その物語に共感し、「地域の価値」(地域の物語)を共有する人々を増やしていく取り組みに関心を持って調査研究を続けています。


その一環として5月に八女市で視察ツアーを実施し、八女福島地区を訪問しました。視察では、町屋を改修し、「八女福島くらし」を体験できる分散型ホテルに再生した「RITA八女福島」、伝統的な八女福島仏壇の仕上げ工程を担う「緒方仏壇本店」、アートの視点から八女提灯の新たな可能を広げている「伊藤権次郎商店」、若い人材を積極的に雇用し、現代のライフスタイルにあった八女提灯を開発する「シラキ工芸」を見学しました。
その後、各グループに分かれて資料収集などを行い、7月には、「RITA八女福島」「緒方仏壇本店」のほか、仏壇づくりの技術を活かし、漆塗りのアクセサリーや漆器を制作する「漆工房 岩弥」、本学比較文化研究所「文化財保存科学研究部会」と連携しつつ、文化財保存・修復用の八女手漉き和紙を制作する「溝田和紙」、工芸品や地場産業製品の卸、販売、商品開発などの事業を行いながら「もの」の背景にある地域文化を伝える「うなぎの寝床」に取材を行いました。
※5月の八女市視察ツアーの状況は、下記のリンクからご覧ください。





今回の講義では、こうした調査研究の中間発表として、八女の伝統工芸における伝統と革新の取り組みが紹介されました。伝統的な八女福島仏壇や八女提灯の需要が縮小し、技術の継承が課題となる中で、伝統的な技術を活かした新商品開発および流通・販売を通して、伝統工芸品の新たな意味や価値を構築しようとする職人や企業の取り組みは、“モノづくり”にとどまらず、「八女らしさ」というストーリーや意味を込めた“価値づくり”としても注目されます。
今回、「緒方仏壇本店」「漆工房 岩弥」を取材した宮下康生さんと岡﨑聖詔さんは、八女市に4度訪問し、現地の方々から直接お話を伺う中で、伝統工芸が直面する課題と、伝統を守りながらも時代の変化に合わせて新たな価値を創出していく取り組みについて理解を深めました。
「溝田和紙」を取材した小森絢咲さん、田中稜青さん、林田彩愛さんは、手漉き体験もさせていただきながら八女手漉き和紙の特徴や魅力を学び、職人の技のすごさを改めて実感しました。
「うなぎの寝床」を取材した直塚和輝さん、笠紗佑里さんは、同社の取り組みについて学ぶ中で、土地の特性を理解することや作り手をリスペクトすることの大切さを知りました。
「シラキ工芸」の若い職人さんを取材した永渕海友さん、上田莉さんは、同世代の職人たちが、真剣に提灯づくりに向き合う姿に刺激を受けるとともに、一つひとつ手作業で心を込めて作られる提灯にこれまで以上に価値を感じたそうです。
「古民家ホテルRITA」を見学した井上純花さんは、歴史の重みや背景に魅せられて人が訪れることを学びました。

こうした活動は、文化を通じた地域づくりを学ぶ貴重なフィールドワークであり、学生同士の学び合いの機会にもつながりました。岩本ゼミでは今後も八女福島地区を中心に、伝統工芸品以外にも、古民家、歴史的町並みなど、地域にあるものを価値づける手段や仕組みについて調査研究を進めていく予定です。