研究・産学官連携の研究TOPICS 胸部硬膜外麻酔の安全性を向上させる「リアルタイム 超音波ガイド下穿刺法」の有用性を証明

胸部硬膜外麻酔の安全性を向上させる「リアルタイム 超音波ガイド下穿刺法」の有用性を証明

麻酔・集中治療分野の最高峰国際誌『Anaesthesia』に原著論文が掲載、 異例のEditorial(解説記事)も付与

本学医学部麻酔学講座(助教:上瀧正三郎)および大牟田市立病院麻酔科らの研究グループは、腹部手術等の周術期管理で広く用いられる「胸部硬膜外麻酔」において、超音波画像をリアルタイムに確認しながら安全・確実・迅速に穿刺を行う新しい手法(リアルタイム超音波ガイド下穿刺法)の有効性を検証するランダム化比較試験を実施しました。

その結果、従来の「手技前超音波確認法」と比較して、初回成功率が有意に高まることを世界で初めて明らかにしました。

本研究成果は、英国麻酔学会の学会誌であり麻酔・集中治療分野の主要最高峰雑誌である『Anaesthesia』誌(Impact Factor: 7.4)のオンライン版に2026年9月1日付で掲載されました。さらに、本研究の臨床的インパクトと技術的革新性が編集委員会に高く評価され、同誌にて単独のEditorial(解説記事)が付与されるという異例の快挙を成し遂げました。

【本研究のハイライト】

1. 高い安全性を裏付ける結果:

リアルタイム超音波ガイド法により、胸部硬膜外麻酔の初回穿刺成功率が有意に向上することを示しました。

2. 手技の視覚化による革新:

従来は術者の感触に依存していた高難易度手技を「画面上で確認しながら行う」ことで、より確実かつ迅速な実施が可能となります。

3. 世界的な高評価:

『Anaesthesia』誌のEditorialにおいて、「胸部硬膜外麻酔における超音波利活用の将来を切り拓く重要な一歩」として高く評価されました。

■ 研究の背景

腹部手術などの大きな手術を受ける患者さんに対する「胸部硬膜外麻酔」は、術中・術後の痛みを和らげ、早期回復を促すために極めて重要な手技です。しかし、下部胸椎エリアは解剖学的に複雑で技術的難易度が高く、これまでは体表の目印や術者の手の感触に頼る「ブラインド操作」に近い方法で行われることが多くありました。そのため、何度も穿刺をやり直したり、手技自体が不成功に終わるリスクがあり、より安全で確実な手技の確立が望まれていました。

■ 研究の内容と成果

本研究グループは、胸部硬膜外麻酔において、針を進める過程をリアルタイムで超音波画面に描出しながら穿刺する「リアルタイム超音波ガイド下穿刺法」と、事前に超音波で位置を確認してから穿刺する「手技前超音波確認法」の精度・有効性を比較するランダム化比較試験を実施しました。

その結果、リアルタイム法を用いることで初回での穿刺成功率が有意に高くなることが証明されました。これにより、患者さんの体への負担軽減、ならびに合併症リスクの低減に直結する臨床的エビデンスが示されました。

■ 今後の展望

本手法が普及することで、技術的難易度が高いとされてきた胸部硬膜外麻酔の安全性が劇的に向上し、より多くの患者さんが安全に高品質な周術期麻酔管理を受けられるようになると期待されます。研究グループでは今後も、臨床現場の課題に即した実践的な臨床研究を継続し、医療の質向上に貢献してまいります。

■ 論文情報

タイトル: Real-time vs. pre-procedural ultrasound guidance for lower thoracic epidural puncture: a randomised controlled trial

掲載誌: Anaesthesia(Impact Factor: 7.4)

著者: Shosaburo Jotaki, Naoki Maesako, Kenta Murotani, Moeto Uchimura, Teruyuki Hiraki (上瀧正三郎、前迫直樹、室谷健太、内村萌人、平木照之)

Editorialタイトル: Real-time ultrasound-guided thoracic epidural catheter insertion in routine clinical practice: every journey begins with a single step

公開日: 2026年9月1日(オンライン公開)

DOI: https://doi.org/10.1111/anae.70361

上瀧先生コメント

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