研究・産学官連携の研究TOPICS 地域の医療機関と連携し、膵癌の早期診断を目指す「くるめ膵癌早期診断プロジェクト-BRIDGE Project-」が始動
医学部内科学講座(消化器内科部門)の川口巧教授、阪上尊彦助教らは、久留米大学病院 消化器病センターを中核に、地域のかかりつけ医と連携して膵癌の早期診断を目指す「くるめ膵癌早期診断プロジェクト-BRIDGE Project-」を開始しました。
本プロジェクトは、筑後地区を中心とした地域の医療機関と連携し、膵癌の早期診断率の向上と死亡率の低減を目指すものです。「BRIDGE」には、地域のかかりつけ医と本学病院、患者さんの命、そして地域医療の未来をつなぐ「架け橋」という意味が込められています。
膵癌の早期診断に向けた地域連携
膵癌は、初期には症状が現れにくく、発見された時点ですでに進行しているケースが少なくありません。5年相対生存率は約13%とされており、早期に発見し、適切な治療につなげることが重要です。
本プロジェクトでは、地域のかかりつけ医が「膵癌早期発見チェックリスト」を活用し、膵癌の家族歴や糖尿病、膵疾患の既往などのリスク因子、腹部超音波検査の所見を確認します。膵癌の可能性が考えられる場合は、専用の紹介状を用いて久留米大学病院への紹介につなげます。
専用の紹介状は、必要な項目をチェックする簡潔な形式としています。紹介を受けた患者さんは、まず血液検査や腹部超音波検査、MRIなどの検査を受け、その後、2回目の外来時に超音波内視鏡検査(EUS)を実施します。
EUSは、先端に超音波装置が付いた内視鏡を胃や十二指腸に挿入し、膵臓の近くから詳しく観察する検査です。通常の腹部超音波検査では、胃腸のガスなどの影響で膵臓の一部が見えにくい場合があります。EUSを用いることで、小さな病変の発見につながることが期待されます。
プロジェクト開始後、メンバーは久留米医師会での説明会などを通じて、地域の医師への周知を進めてきました。開始から約2か月で紹介患者は着実に増えており、これまで紹介のなかった医療機関からも患者さんが紹介されるなど、地域との連携が広がり始めています。
プロジェクトメンバーである阪上尊彦助教は、プロジェクトの意義について、「膵癌は、早期に見つけることができれば、治療の可能性が広がります。これまで、膵癌の家族歴などがあっても、どこに紹介すればよいのか、どのような検査につなげればよいのかが分かりにくい場合がありました。今回のプロジェクトを通じて、地域の先生方が気になる患者さんを紹介しやすい環境を整え、早期診断につなげていきたいと考えています」とコメントしました。
複数部門の連携と診断法の研究
本プロジェクトでは、消化器内科・消化器病センターを中心に、外科、放射線科、病理学講座、臨床検査部、総合健診センターなど、大学病院の複数部門が連携しています。精密な診断から治療、研究までを支える「オール久留米体制」で、膵癌の早期診断に取り組んでいます。
さらに、本学が日米で特許を取得したエクソソーム由来microRNAを用いた膵癌早期診断法や、便を用いた低侵襲な診断法の開発にも取り組んでいます。
本学は今後も、地域の医療機関との連携を深めながら、膵癌の早期発見・早期診断につながる仕組みづくりを進めていきます。